旧矢立隧道
何度目にここを訪れた時でしょうか。季節は冬でした。
いつものように一度トンネルを走り抜けてUターンして引き返し
出口のすぐ先に車を停めました。
この日は4人で来ていました。それぞれ車から降りてトンネルを見つめます。
街灯もなく、一台の車も通らない寂しい夜でした。
いつものことですが、心霊スポットではあまり話をしません。
みんな無言でトンネルを見つめます。・・・・どれくらい時間が経ったでしょうか?
暗闇に目が慣れてと言いたいのですが、実際にはあまりにも暗い所を見つめていると
だんだん目が疲れてきます。殊にトンネルの入り口は対象物がないために
焦点が定まらないのでおかしくなってきます。
私の目には、地上から1メートル位の高さを左右にフワフワと飛ぶホタルのような
光が見えていました。「なんか飛んでないか?」と、私は指差しました。
それぞれに目を凝らし、確かに何か飛んでいると、
私の目の錯覚ではないと皆が実感したその時でした。
突然、入り口全体が「ボワッ!」と光りました。まるでガスが爆発したかのように!
咄嗟に、車が来るのか?と思いましたが青白い光は車のライトとは違い過ぎました。
そして、その光は一箇所に集中してサッカーボールほどの大きさに縮まると
ビューッと私達をめがけて飛んで来るのです!
悲鳴にもならないような声を上げて車に飛び乗り、その場を離れました。
ほんの数秒の出来事でしたが、あの時に逃げ出さずに向かって来る光を待っていたら
何が起きていたのでしょうか?
トンネル先のカーブミラーに女性が映るとか、
発破事故で亡くなった人の霊が出るとかって話も聞きました。
私が幼少の頃からいろいろな噂があって、大人が本気で怖がるそんなトンネルでした。
現在は新トンネルが開通して旧道は封鎖されているようです。
そして、トンネルの入り口はコンクリートで完全に封鎖されているそうです。
まるで、何かを閉じ込めるかのように・・・
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