さまよう女(その2)


 
数年後のことです。

友人Aは後輩と一緒に住む為にT山を道路一つ隔てたマンションを借りました。

駐車場が満杯で契約できなかったことからT山横の空き地に車を止めていました。 

ある日のこと、出先から2人が帰り着いたのは深夜でした。

いつものように空き地に車を止めましたが、Aは猛烈な睡魔に襲われ

一眠りしてから部屋に戻ると言いシートを倒したそうです。

後輩が車を離れ、Aが眠りに落ちそうになったその時でした。

突然全身が硬直し、いわゆる金縛り状態に陥りました。

目を開くことすらできない状態の中で、遠くの林の中から宙を飛ぶように近づいてくる

女の気配をハッキリと意識することができました。

スーッと近づいて来た女は、ドアを開けることもなく寝ているAの顔を

息がかかるくらいの距離から覗きこみました。

目を開けていなくてもAにはその女の顔が見えました。

真っ赤な唇だけの真っ黒な顔、唇の端をニヤッと歪ませて両手を首にかけようとしてきた時

指先を動かすことがかなったAは「ウワーッ!」と大声で叫びました。

金縛りが解けた時には女の姿は消えていました。


Aは走ってマンションまで帰りました。

部屋に居合わせた友人達に先ほどの出来事を話したそうです。

すると、先に帰った後輩は話を聞いていないのかボーッと放心状態のような顔をして

ただ座っていました。

「どうした?」と問いただすと、体を震わせながら話し出しました。

「マンションの階段を上りながら何気なく車の方を見たら、寝ているA先輩に覆い被さるように

女が乗っかってた。でも、その女の顔はこっちを見てた。そして、俺を見てニヤッと笑った」と。

「どうして助けに来ない!」と後輩が怒られたのは言うまでもありませんが。


これが私の友人達が体験した話です。

車の中のA、マンションから見ていた後輩。

この2人に同時にひきつった笑い顔を見せるというのは凶悪な性格なのでしょうか?

また、特定の場所だけでなくT山の敷地内をさまよっているのか?

いや、既にT山を飛び出して市街地に足を伸ばしているのでは?


・・・・とにかく怖いです。

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